1000文字内小説→認識しません


<認識しません> 耳元でアシスタントAIが騒いでいる。 「うるさい、今日は休みだろ、とめろ」 <認識しません> 「だから、止めろっつーの」 とうとう壊れたか。珍しく手動でAIを止めた。  AIが浸透した。タブレットでメールを見ると、 もう一度タブレットに触れると、 "存在証明する、印鑑、住基カード、免許証、など市役所に手続きしてください"  市役所って今博物館みたいなとこ。物理的な証明書はあるが普段は飾り。。 外にブーンと音、 ベランダにドローン。カメラが自分をとらえている。 「なんだよ」  書類一式カバンに詰め外に出た。 あれ不審者追跡用だ。 <とまりなさい> スピーカーから音。  道に出た。自動運転の車。その時だ。運よく昔ながらのタクシー。手を大きく振り呼び寄せ乗った。 「どちらまで」 「市役所まで、は早く」 「シートベルトな。元気よく走るから」  そういうと、キャァィィィとタイヤが音だした。後ろからドローン。 「カマすぞ」  運転士はハンドル横のボタンを押した。グッと体が座席に押し付けられる。 「あのドローン、ここは無理だろ」 ハンドルを器用に操り、工業地帯の立て込んだところに突っ込む。 「お客さん現金払いだよな」 「も、もちろん」 市役所。今は博物館。駆け込んで中のデータ保管室に。 「ご用件は」 「あの、存在証明をしに来ました」 「書類などお持ちですか」 「はい」 「では、この様式3号に記入2階5番窓口に」 普段ならこんなふざけた真似をしないだろ。 窓口に向かう。 階段を上がったところだ。まばゆいライトに照らされた。 「はーい、今日のドッキリです」 「えっええー」 「ご存知ですよね、存在確認番組」 「見てますけど、なんでけどなんで僕が」 「見ていればわかるでしょ、無作為に選ばれ、存在確認システムの脆弱面確認のため走り回る」 「けどねぇ」 「ご心配なく放送時にはご本人とわからぬよう加工いたします。」  モニターにはイケメンの俳優がハデなアクシヨンをしながら走り回り、タクシーがホイールスピンをしながら10台ほどのドローンを巻き… 「タクシーは」 「偶然です。それでは、放送に同意として手続きを」  疲れがドッときた。